リレーコラム 私の考える「『生きる力』をはぐくむ」とは?

第16回(後) ※今回は、前後編に分けてお届けします。
飲食店オーナー
鶴賀太郎さん

※前編はこちら http://ikihug.com/blog/?p=2621

では学歴ではなく、何が評価されるのでしょう?
もちろん知性や教養も評価されます。
でもそれ以上に評価されるのは、どれだけいい隣人・市民であるかということなんですよね。
海外では少なからぬ場合、教育レベルと階層・所得がリンクしてしまうので、
いい学校を出ていても他の階層の人からは「ふーん、そういうクラスの人なんだ」くらいにしか思われず、
とりわけ尊敬されるということにはなりません。
でも周囲やコミュニティーのために一生懸命な人は階層や所得に関係なく尊敬の対象になります。

では学歴に惑わされる人とそうでない人の違いはどこにあるのでしょう?
それは「人間は一人では生きていけない」ということをわかっているかどうかの差なのではないかと僕は思っています。

人間は一人では絶対に生きてはいけません。少なくとも僕は自分の食べるものさえ自給自足できません。
また水道・電気がなくなったら間違いなくあっという間にくたばってしまうでしょう。
現代人は他の人の力を借りなければライフラインさえ確保できない存在です。

ほとんどの人がそうだと思います。
でも自分のことをエリートとか選ばれし者と勘違いしている人は、
そこがわからなくなることがあるのです。「自分のおかげで」という発想になってしまうからです。
頭では一人では生きていけないといことくらいわかっていても、どうしても丁寧な感謝の気持ちを持てなくなってしまい
「オレは特別なんだから、周りにこれくらいしてもらってもバチは当たらないよな」という風に考えてしまうのです。

でもどれだけ立派な肩書きをお持ちの方でも、
一旦そのコンテクストの外に出てしまうと肩書の意味がなくなってしまいます。
先ほども書いたように、海外に出たらほとんど無意味になってしまいます。
それでも学歴や肩書きなどのこだわる人に「生きる力」はどれだけあるでしょう。まったくないですよね。

逆に自分は一人では生きられないということを本当に理解していたら、絶対周りに感謝します。
そして感謝ばかりしていられないので「じゃあ、自分にはみんなのために何ができるだろうか」という風に考えるようになります。
できることはもちろん人によって違います。でも自分のできる範囲で世の中やコミュニティーに貢献したり、
一生懸命自分にできることを増やそうと努力していきます。

そういう気持は内発的なものなので強いんです。その結果の努力によって得られたものは本当の意味で身に付きます。
言葉を換えれば「生きる力」になっていきます。たとえ生来能力的に劣っている部分や障害があっても、
周囲に対して自分なりの貢献をする人のことを周囲はサポートするので大丈夫です。

こういうことを言うと「それはキレイごとで、第一線のバリバリでやっている人はそんな甘いことを言ってられない」
と冷ややかに反応する人も出てくるかも知れません。
でも世界で最も成功したビジネスマンであるビル・ゲイツは早々にリタイアしてボランティア中心の生活をしているし、
日本で一番成功している孫正義さんも東日本大震災のとき、個人的に巨額の寄付をするとともに、
ソフトバンクのインフラをいち早く被災地に提供しました。
派手で空虚な世界に思われがちなハリウッドのトップスター、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー夫妻は、
多くの子どもを養子にむかえているのみならず、ブラピは社会的意義のありながら興行化するのが難しい作品を、
プロデューサーとして多数ヒットさせてきています。
色男の代名詞だったジョージ・クルーニーも、世界中で人道活動に献身的に取り組んでいます。

彼らのようにお金も名誉もある人が、なぜそこまで他人のために尽くすのでしょう?
それは自分一人ではその富や地位を得ることができないことをわかっており、
手に入れた立場として還元して世界をよくしていかなければいけないということを、
心から理解しているからなのではないかと思います。

僕にはもうすぐ1歳なろうとする娘がいますが、
彼女にはそういうことを理解するような子に育って欲しいなと思っています。

競争を勝ち抜いて生きる力をつけるのではなく、
共生を促すことによって生きる力を増していくことができるような子どもに育って欲しいと思うのです。

そういう子どもが増えたら、世界は今よりもずっと素敵な場所になると僕は信じています。

【今回の執筆者】
飲食店オーナー
鶴賀太郎 さん
1972年、東京生まれ。日本で証券会社、広告代理店など勤務の後、2005年よりグアムで日本食店を経営。
その傍らグアム国際映画祭のディレクターを務めたり、ライター活動をするなど多方面で活躍中。
Aji-Ichi Japanese Restaurant: www.facebook.com/ajiichi.guam
Exciteニュース コネタ執筆記事一覧: www.excite.co.jp/News/bit/author/tsuruga_t/

The following two tabs change content below.
富岡 麻美

富岡 麻美

1975年、愛知県生まれ。フリーランスライター。2児の母。大手企業数社でのアシスタント、秘書を経て結婚。海と山に近いまちで、子育てをしながらライフワークであるライティングおよび各種NPOの活動に従事。子どもの誕生がきっかけで幼児教育に興味を持ち、独学で学ぶ。様々な教育法を取り入れながらも独自のスタイルで、勝手気ままな育児の真っ最中。2012年より「NPO法人いきはぐ」ライターとして活動。