リレーコラム 私の考える「『生きる力』をはぐくむ」とは?

第20回
黒門とびうおクラブ代表
永井 巧さん

逗子の海と山で小学生と活動する「黒門とびうおクラブ」を通じて、
二つのことが、エピソードとして思い浮かびました。
ひとつめは「幸福感」、そして、次に「エッジを広げて、マップを作ること」です。
まず、「幸福感」についてです。
海岸の端まで全員で走る前、ある子に、確認されたことがありました。
「これは競争なの?競争は嫌だなー」
他の子との順位付けがされること、評価されることを意識していることが分かります。
一方で、波のサイズがある日にボードをパドルして沖に出て戻ってこようと言えば、
波を超えて沖にでることに真っ向から向き合い、波に乗って満面の笑顔で帰ってきます。
こんな時、競争かどうかを尋ねる子はいません。
自然に対峙する中で、他人の評価をすることなく、
自分の得た手応えで、幸福感を得ているのだと思います。

もうひとつが、ゼロから創造することで得られるエッジ(限界)を広げる感覚、
具体的な自然や、社会環境との生態系マップを自分の中に持つ事です。
火を起こし、木を切り倒すことができる私有地の山林を利用させていただき、
フロンティア気分を味わいながら、小屋や畑を作ろうと集っています。
ここでは子ども達は、とても自立的に動きます。
木を切ったり組み立てたりの作業、火を焚き、ツタでのターザン遊び、丸太転がし、ハンモック等々。
退屈したり、仲間に入れない子の姿もありません。
ノコギリや火の注意点いは、お互いに気を配り合います。
また、土地の所有者は地域の大人たちが恊働で借りており、
様々な地域の人とのかかわり合いや関係がとても大切になっています。

このような光景は、海や山に隣接する町では、道具は違えど、どちらも普通にあったようなコトなのでしょう。
しかし、今や当たり前とはいえません。
一方で、私たち社会は、子どもたちにあまりにも沢山のモノを与えながら、
沢山の機会や場を奪っていることに気付く必要があります。
子どもたちは、創造的にものを創るチカラをもっているはずなのに、モノを与えることで、
創造することよりも、消費者となります。
また、優れた環境への適応力があるはずが、安全を守るとの名の下に、
自然に触れることや道具を扱う機会を失っています。

子どもたちが大地や海に触れながら適応力を高め、身の回りにいる様々な人との関係性を深めることで、
「幸福感」もまた高まるもので、つながりあったものです。
これから社会がどのように変化していくか不可知ではありますが、
世界のどこにいっても、どの価値観の中でも、本質的で普遍的な感覚だと考えています。

【今回の執筆者】
永井巧さん(ながいたくみ)

黒門とびうおクラブ代表。
学生時代は湘南でライフセービング、およびソマリアの難民キャンプで活動。
大学を卒業後、タヒチの黒真珠の養殖業に従事したのち、帰国しアウトドアスポーツ業界で働く。
現在は、小学生を対象にした放課後自然教室「黒門とびうおクラブ」を逗子で仲間たちと運営中。

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富岡 麻美

富岡 麻美

1975年、愛知県生まれ。フリーランスライター。2児の母。大手企業数社でのアシスタント、秘書を経て結婚。海と山に近いまちで、子育てをしながらライフワークであるライティングおよび各種NPOの活動に従事。子どもの誕生がきっかけで幼児教育に興味を持ち、独学で学ぶ。様々な教育法を取り入れながらも独自のスタイルで、勝手気ままな育児の真っ最中。2012年より「NPO法人いきはぐ」ライターとして活動。